( ^ω^)は、水も酸素もなくては生きられないようです
-
4 :1
:2007/11/16(金) 17:15:17.58 ID:y+sFl1ez0
- 1000年後が、きっと幸せな時代でありますように。
冷たい。
あなたの行く先が、暖かな場所でありますように。
粘度の高い液体が、カプセルを埋めていく。
ねえ、ブーン?
でも、暖かいんだ。手のひらから、彼女の体温が。
――またきっと、一緒になれるよね?
眠い。すごく。でもなんだか、とても気持ちがいい。
ブーン? ――ブーン?
意識が先細っていく。だんだん、閉じて、ちいさく……、
――もう……寝ちゃったのかな……。
……………………。
――ああ、ぼくは。
――どうして、生きていたんだっけ?
-
5 :1
:2007/11/16(金) 17:17:13.05 ID:y+sFl1ez0
( ^ω^)は、水も酸素もなくては生きられないようです
1話 直交軌道
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6 :1
:2007/11/16(金) 17:18:56.01 ID:y+sFl1ez0
- ――『塔』・物資集積区画・南24ブロック――
ξ゚听)ξ 「村長ー、ホントなんですかー? 例の警報って」
ミ,,゚Д゚彡 「おう、間違いねーよ。確かに昨日、この辺でレッドアラートが鳴ったってよ」
川 ゚ -゚) 「しかし……侵入者らしき形跡どころか、チリ一つ落ちていない。またショボンの見間違いでは?」
ミ,,゚Д゚彡 「ンなこたぁねぇと思うんだけどなぁ……」
ξ゚听)ξ 「ショボンさん、ちょっと前だって工業区画に侵入者って大騒ぎして、結局寝ぼけてただけじゃなかったですか」
ミ,,゚Д゚彡 「まぁ、寝ぼけて警報見逃すよっかマシだろ」
川 ゚ -゚) 「……でももう、怪しいのはこの部屋くらいしかない」
ξ゚听)ξ 「『開かずの扉』ですか。でも、もうずーっと誰も開けられないんでしょ? だったら、確かめようがないですよ」
ミ,,゚Д゚彡 「まぁ、それでも一応確かめるのが仕事だからよぉ。どっちにせよ、問題ナシに越したこたねーよ、っと」
プシュッ! シュゴーッ!
ξ;゚听)ξ 「え?」
ミ,,゚Д゚彡 「あ?」
川 ゚ -゚) 「……『開かずの扉』が……開いた?」
-
8 :1
:2007/11/16(金) 17:20:57.36 ID:y+sFl1ez0
- ――『開かずの扉』・中――
暗くて、よく分からない。今は夜なのかもしれなかった。
いや違うか、そうだ、ここは室内なんだから。だとすれば、網膜素子の絞りが狂っているのかもしれない。
( ^ω^) 「(それにしても……寒いお……)」
粘ついた液体が、体の周りにまとわりついている。
感覚器の狂いか、それともカプセル側の温度調整が狂っているのか、寒い。セラミック骨格まで冷え込んでいるのが分かる。
暗すぎる網膜映像に投射される体内温度は、危険域ギリギリを指していた。
( ^ω^) 「(まぁでも、温度でまだ良かったかもしれないお……。
これが酸素濃度の設定だったりしたら、起きた瞬間死んでたお……)」
カプセルハッチのロック解除は、どうするんだったっけ。
周囲は死んだように静かで、頼りになりそうなものの兆候は何もない。
まぁでも、ゆっくり思い出していこう。
今さら焦っても、仕方がないんだから。
-
10 :1
:2007/11/16(金) 17:23:12.66 ID:y+sFl1ez0
- ――『開かずの扉』・外――
ミ,,゚Д゚彡 「……コイツは、ちっとヤベぇかもしんねーな」
ξ゚听)ξ 「他のところには誰もいなかったんだから……この中に、いるんですよね。誰か」
ミ,,゚Д゚彡 「参ったな。場合によっちゃ戦闘まであるぞコイツぁ……。ツン、クー、お前らどっちが若い?」
ξ゚听)ξ 「クーです」
川 ゚ -゚) 「ツンだ」
ミ,,゚Д゚彡 「……ツンか。仲がよろしいのも結構だがよ、ウソぁいけねーなウソぁ」
ξ゚听)ξ 「…………」
ミ,,゚Д゚彡 「お前は端末の部屋まで戻って村に報告だ。クーとオレは突入。
いいか、何が聞こえても振り向くな。それと、村から増援が来るまでこっちに戻ってくんなよ」
ξ゚听)ξ 「…………」
ミ,,゚Д゚彡 「返事」
ξ゚听)ξ 「……はい」
ミ,,゚Д゚彡 「じゃ、クーはオレと一緒に突入だ。悪ぃな」
川 ゚ -゚) 「問題ない。慣れてる」
-
11 :1
:2007/11/16(金) 17:25:22.15 ID:y+sFl1ez0
- ξ゚听)ξ 「……気をつけてくださいね、くれぐれも」
ミ,,゚Д゚彡 「オッサンをナメんじゃねーよ。ケツまくる速さは若いヤツにゃ負けねー」
川 ゚ -゚) 「危なければすぐに撤退する。むしろ危ないのはツンの方かもしれない。
確率は低いが、仲間がいたらマズい。いいか、ツンも危なければすぐに――、」
ξ゚听)ξ 「もう、分かってるよ」
ミ,,゚Д゚彡 「おうよ。じゃ、そういうこった。じゃ、ツンは先に行ってくれ」
ξ゚听)ξ 「絶対に、応援連れてくるからね。じゃあね!」 (ダッ
ミ,,゚Д゚彡 「……さてと、おれらの仕事は、」
川 ゚ -゚) 「何があっても、この部屋に侵入者を釘付けにする」
ミ,,゚Д゚彡 「そうだ。オレが前衛だ。お前はバックアップ。トラップの可能性もある。ヤバけりゃ、さっさと逃げろよ」
川 ゚ -゚) 「分かってる。わたしは、応援に情報を伝えなければいけない。村長はすぐ見捨てる」
ミ,,゚Д゚彡 「それでいい。じゃ行くぞ」
3,2,1――マーク!
-
12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
:2007/11/16(金) 17:28:06.26 ID:y+sFl1ez0
- ――『開かずの扉』・中――
( ^ω^) 「……お?」
音が、聞こえた気がした。靴音が。
いや、そんなバカな。この区画は、核爆発にだって耐えるハッチで厳重に封印されているハズだ。
外部からここを開くなんて、物理的に、
( ^ω^) 「(……や、そんなこともないかお?)」
自分が眠っている間に、技術は、自分をとっくに追い越してしまったのかもしれない。
充分あり得る。自分が起きたということは、もう、あれから――、
ミ,,゚Д゚彡 「うおおぉ!? 何だおい!? ワケ分かんねー部屋だぞゴルァ!」
川 ゚ -゚) 「……熱・磁・電波、反応なし。とりあえず、危険ではなさそうだ」
ミ,,゚Д゚彡 「ガスはどうだ?」
川 ゚ -゚) 「有毒な反応は――ん?」
ミ,,゚Д゚彡 「?」
川 ゚ -゚) 「酸素……? ……この部屋の空気には、酸素が約21%も含まれている」
-
13 :1
:2007/11/16(金) 17:32:06.40 ID:y+sFl1ez0
- ミ,,゚Д゚彡 「酸素ぉ?」
川 ゚ -゚) 「窒素78%。アルゴン1%。その他、一酸化炭素、ネオン、ヘリウム、水素などは変わらない。
けれど、酸素と二酸化炭素の比率が、ほぼ完全に逆転している」
ミ,,゚Д゚彡 「……どういうこった」
川 ゚ -゚) 「さぁ、そこまでは……」
間違いない。ヒトの声だ、あれは。
何を言っているのかはよく分からないけれど、誰かが、この外に、いる。
( ^ω^) 「おっおー! 誰かいるんですかおー!?」
ミ,,゚Д゚彡 「!?」
川 ゚ -゚) 「!?」
叩け。閉ざされたハッチを叩け。
音を出せ。気づかせろ。
ぼくは、ここにいる。
ミ,,゚Д゚彡 「な、なんだ? あの機械の中から音がしてるのか……?」
-
15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
:2007/11/16(金) 17:34:40.23 ID:y+sFl1ez0
- 川 ゚ -゚) 「当面の危険がない以上、応援を待ってから確認するのが得策」
ミ,,゚Д゚彡 「いや……そうじゃねぇな。クー、お前ツンを追え。ここに危険がないってこたぁ、アイツが危ねぇ」
川 ゚ -゚) 「……村長は?」
ミ,,゚Д゚彡 「オレぁコイツを見張る。何が出てくるか分からねーけどな」
川 ゚ -゚) 「一人になったところを襲撃される可能性も」
ミ,,゚Д゚彡 「そりゃそーだがよ。それを言ったらツンも同じこったな」
川 ゚ -゚) 「…………」
ミ,,゚Д゚彡 「何のこたぁねーよ、オレは見張り。あいつは連絡。重要なのはあっちだしな。
それに、オレのカンだがね、コイツに敵意はない。そういう気がする」
川 ゚ -゚) 「……あなたはウソつきだ。だから、その言葉は信じない」
ミ,,゚Д゚彡 「ほぉ、それで?」
川 ゚ -゚) 「……でも、ツンが心配だから、わたしは行く」
ミ,,゚Д゚彡 「いい答えだ。んじゃ、さっさと行きな」
川 ゚ -゚) 「忘れないで欲しい。268番村の村長はあなた。だから、わたしたちは、あなたがいないと困る」
ミ,,゚Д゚彡 「よぉーく知ってるよ。無茶すんなって荒巻のヤツもうっせーんだ」
川 ゚ -゚) 「……それじゃあ、わたしは行く」 (ダッ
-
19 :1
:2007/11/16(金) 17:37:37.19 ID:y+sFl1ez0
- ミ,,゚Д゚彡 「さぁーてよ、誰だか分んねーが危険因子さんよ。どうなんだ実際。あんた敵なのか?」
ドンドン!
ミ,,゚Д゚彡 「……なぁ、もしかしてよぉ、あんた」
ドンドン!
ミ,,゚Д゚彡 「そのハッチ、開けらんねーのか?」
――――――
(; ^ω^) 「(おっおっおっ、ヤバいお……ホントにどうやって開けるのか忘れてしまったお……)」
声がしている。だから、応えないといけない。
今すぐにでもここを開けて、ぼくは生きてるってことを教えないと、あの声はどこかへ行ってしまうかもしれない。
( ^ω^) 「(――お、そうだお?)」
――そうだ。この扉の向こうにいるのは、彼女だって可能性もある。
というか、もちろんそうなのだ。
外部からの侵入が難しいんだから、向こうに立っているのは、自分と一緒に眠りについた彼女の確率が高い。
そうだ。
なんとしても、この重たいハッチを開けなきゃ。
約束したんだ。ずっと一緒だって。
-
21 :1
:2007/11/16(金) 17:40:26.97 ID:y+sFl1ez0
- ミ,,゚Д゚彡 「……悪ぃな、この部屋の機械はワケが分からん。オレにゃ開けられそうにねーぞ」
ドンドン!
ミ,,゚Д゚彡 「……声、聞こえてねーのかな?」
ドンドン!
ミ,,゚Д゚彡 「おーい、分かったから、なんとかすっからよー、とりあえず落ち着いてくれやー」
――――――
( ^ω^) 「ぼくは生きてるお! ツン、キミだお!? 今開けるお、絶対に今開けるから待ってるお!」
叩く。ふやけきってしまった手の皮が、どんどん擦り剥けていく。
構うもんか。キチンキトサンの人工皮膚なんて、幾らだって修理がきく。
(; ^ω^) 「どうすればいいお!? 開くお、開けお!」
答えは、頭の上から降ってきた。
『バイタルサインの上昇を確認。電圧上昇、関節の液化、安定しつつあり。周囲にアンノウン1。ハッチを開きますか?』
( ^ω^) 「とっとと開けお、このポンコツっ!」
-
22 :1
:2007/11/16(金) 17:43:18.22 ID:y+sFl1ez0
- バシュゥ――――っ!
圧縮空気の抜ける重々しい音。ぼくの周囲を満たしていた液体が抜けていく感覚。
きっと、生まれる時の赤ん坊は、こんな感じなんだろうな、と思う。
とても懐かしい感覚だ。
液体に保護されてたゆたう、間延びした時間と入れ替えに。
突き刺さるような激しさの、これは、大気だ。
重力が復活していく。
怠けに怠けきっていたはずの体は、意外とすんなり思い出していく。
ああ、そうそう。こんな感じ。
生きるっていうのは、確かに、こういう感覚の中にいることだった。
ミ,,゚Д゚彡 「おぉ!? なんじゃぁこりゃぁ!?」
何か声がする。
ツン、キミなのかな。少し声がしわがれた? ぼくも、そんな感じなんだろうか。
それとも、ぼくの耳が、まだちょっとおかしいのかな。
一歩踏み出す。
安寧の、カプセルの中から。
-
25 :1
:2007/11/16(金) 17:46:09.99 ID:y+sFl1ez0
- ( ^ω^) 「……お」
ミ,,゚Д゚彡 「……うおぉぉぉ、たまげたぜぇ。60年前に製造されたオレさまも、さすがにこんな体験はねぇ」
(; ^ω^) 「? なんて言ってるお? っていうか、ツンめちゃくちゃ老けたお?」
ミ,,゚Д゚彡 「はぁ? 何語だテメー、ケンカ売ってんのか? 言っとくけどなぁ、オレはめちゃくちゃケンカ弱いぞ?」
このオッサンが、ツン?
コールドスリープっていうのは案外そんなもんなのかな? 歳は取らないって説明だったけど。
いやいやいやいや、そうじゃない。落ち着け自分。
幾らなんでもこのヒトは間違いなくオッサンだ。そしてツンじゃない。
さすがに性別までは変わらないはずだ。多分、いや多分じゃなく、絶対。
(; ^ω^) 「お……失礼ですけど、オッサン誰だお? 女の子を知らないかお、ぼくと一緒に寝てた」
ミ,,゚Д゚彡 「はぁ? お前あれか? 外国人か? いや、それにしたって、きょーび共用語を知らんヤツなんているのか?」
意思の疎通が、できていない?
――そうか、それもそうだ。これだけの時間が経っていて、言語の変遷がないワケがない。
自分だって、古文の授業はニガテだったじゃないか。ありおりはべり、いまそかり。意味が分からなかった。
それにしたってもう少し、あの時代の言葉と共通点くらいあってもいいと思うけれど。それは、無い物ねだりなんだろう。
( ^ω^) 「ぼくはブーンですお。1000年、多分それぐらい昔から来ましたお」
-
27 :1
:2007/11/16(金) 17:49:07.58 ID:y+sFl1ez0
- ミ,,゚Д゚彡 「? ハラでも減ったのか? 悪いな、今持ち合わせがねーぞ」
こっちの言葉はまったく通じた気配がなかったけれど、まぁ、ムリは承知だ。
それよりもツンだ。彼女はどこにいるのか。
見た。
( ^ω^) 「(ツンのカプセルが――開いてるお?)」
ミ,,゚Д゚彡 「まぁよ、いきなり刺されたりしなくてよかったわ。正直ちっとオイルチビったね。オッサンいい歳こいてチビったね」
( ^ω^) 「女の子を知りませんかお!? 背はぼくより少し小さいくらいの、ちょっと生意気な感じの、名前はツンですお!」
ミ,,゚Д゚彡 「――ツン? 今、ツンっつったか?」
( ^ω^) 「! ツンだお! そう、ツンですお!」
ミ,,゚Д゚彡 「ツンがどうしたって? っていうか、アンタなんでツンを知ってんだ?」
――通じた!
ツン、という単語以外はまったく分からないけれど。
そもそも、このオッサンの言う「ツン」が、自分の言う「ツン」と一緒かどうか分からないけれど。
知るかそんなこと。
唯一の手がかりなんだ。何か、何か聞きだせることは、
-
29 :1
:2007/11/16(金) 17:51:35.62 ID:y+sFl1ez0
- ( ^ω^) 「ツンは!? どこにいますかお!?」
ミ,,゚Д゚彡 「……ツンって、『お前をブッ殺したい』とかそういう意味じゃねえよなぁ……。
あのなぁ、お前の言ってるツンがオレの知ってるツンなら、もうすぐ来るぞ。ここに」
( ^ω^) 「なんですお!? ツンがどうかしたんですかお!?」
ミ,,゚Д゚彡 「(……言葉はダメだな。できれば有線結線でイメージファイルでも送りつけてやりたいが……。
こいつ、どこに『タガ』を埋め込んでんだ? ポートがまったく見あたらねぇ……)」
オッサンが、いきなり自らの顔に手を這わせた。
左右の口の端に指を当てて、目をちょっとツリ気味にして。
ミ,,゚听)彡 「おめーの言ってるツンって、こんな顔か?」
( ^ω^) 「! そうですお、全然似てないけど、そんな感じの子ですお!」
ガクガクガク、と首を振って肯定する。
――首を縦に振ることが、この時代で「否定」を意味していたらどうしよう?
ミ,,゚Д゚彡 「……こりゃ、多分マジでツンだな。いよいよもってお前さんが誰なのか分からんぞ、こいつぁ……」
オッサンは、ゆっくりと一つうなずいた。
また通じた。多分。
よかった。言葉はムリでも、何一つ意思疎通の手段がないわけじゃないらしい。
-
31 :1
:2007/11/16(金) 17:54:29.48 ID:y+sFl1ez0
- ( ^ω^) 「ツンのカプセルが開いてますお。多分、ツンはぼくより先に起きたんですお。
どこかにいると思いますお。心当たりはないですかお?」
身振り手振りで、とにかく伝えようと思ってみても、伝えたい意思の複雑さに愕然とした。
ああ、言葉ってなんて便利なんだ。
――とにかく、今自分にできることは?
( ゚听) 「ツンどこ? Where?」
通じるだろうか、これで。
ミ,,゚听)彡 「ツンドコじゃねー、コイツはツンだツン。どこにいるのか聞いてんなら、も・う・す・ぐ・く・る・ぜ、だ」
実に微妙な答えが返ってきた。
多分、『ツン』という言葉は通じていると思う。
もし、このオッサンが彼女を知っているなら、このまま一緒にいれば、ツンと会える確率は低くない。
σ( ^ω^) 「ブーン。ぼ・く・は、ブ・ー・ン」
ミ,,゚Д゚彡 「ブーン? お・ま・え、ブーン?」
( ^ω^) 「ブーン。そう、ブーンですお」
-
32 :1
:2007/11/16(金) 17:56:57.93 ID:y+sFl1ez0
- ツンの顔マネをして、床を指し示す。首をかしげる。
「ツンはここに来るの?」という意思表示。伝わるかどうかは分からないけれど。
ミ,,゚Д゚彡 「……もうすぐ来るぜ。ブーン・ツン・会・え・る、だ」
オッサンが、またうなずく。言葉の中に、「ブーン」と「ツン」がつながって出てきた。
その単語の近さで、なんとなく、会える、と言ってくれている気がした。
( ^ω^) 「マ・ジ!?」
ミ,,゚Д゚彡 「マ・ジ。で、いいんだよな……?」
( ^ω^) 「マジ!?」
ミ,,゚Д゚彡 「マジマジ!」
はたから見たら、今の自分たちはものすごくバカっぽいと思う。
なんかのビデオプログラムで見たことがある。アルファベットの書かれたカードを選んで単語を作るチンパンジー。
今の自分は、あんな感じに違いない。
でも、オッサンの言う「マジ」は、ものすごく力強かった。
力強くて、暖かかった。
( ;ω;)
-
34 :1
:2007/11/16(金) 17:59:23.04 ID:y+sFl1ez0
- ミ,,゚Д゚彡 「お、おい、お前、目からなんか出てるぞ? 機能障害か?」
( ;ω;) 「心配してくれてるのかお? ナ・ミ・ダ。これ、ナミダ。ぼくの時代ではそう言うお」
ミ,,゚Д゚彡 「ナミダ? それ、エラーコードか何かか? ああ畜生、ビコーズを連れてくるんだったな。
アイツならマイナーな言語でも分かりそうなんだが……」
( ;ω;) 「あ・り・が・と・う・お」
ミ,,゚Д゚彡 「だーっ、全然意味が分かんねーっ! くそっ、やっぱ詳しい話は村に帰ってからじゃねーとダメだ!」
「村長っ!? 無事ですかっ!?」
ミ,,゚Д゚彡 「――おお、よーやく応援が来たぜ。喜べ。ツ・ン・来・た」
( ^ω^) 「ツン!? ツンですかお!?」
-
35 :1
:2007/11/16(金) 18:02:14.75 ID:y+sFl1ez0
- 川 ゚
-゚) 「すまない村長、ショボンが眠りこけてたらしくてな。たたき起こすのに手間取った。急いだから、応援がショボンしかいない」
(´・ω・`) 「やぁ、悪いねははは」
ミ,,゚Д゚彡 「お前アレな。向こう3日、独立運用モードな」
(;´・ω・`) 「ええっ、ちょっと堪忍してくれよ、アレ嫌いなんだ、なんか狭苦しくて」
ミ,,゚Д゚彡 「スクラップにされない分いいと思え。クー、村に帰ったらこいつのタガにメンテコードぶち込め」
川 ゚ -゚) 「それはいいが……危険因子は?」
ミ,,゚Д゚彡 「あー、そいつだよそいつ」
(; ^ω^) 「なっ、なんだおっ!? いっぱい来たお!?」
川 ゚ -゚) 「……? 何だ、この言語は?」
ミ,,゚Д゚彡 「さぁな。オレもお手上げだ。ビコーズに相談しようと思ってる。が、まぁ、害意はなさそうだ。
……なぁ、ところでツンは?」
川 ゚ -゚) 「ああ、わたしたちの後詰めで、部屋の外にいる」
ミ,,゚Д゚彡 「悪いが呼んできてくれ」
川 ゚ -゚) 「? どうして?」
ミ,,゚Д゚彡 「どうやらなぁ、コイツ、ツンを知ってるらしいんだ」
-
39 :1
:2007/11/16(金) 18:04:53.63 ID:y+sFl1ez0
- (; ^ω^) 「ツンはどこだお?」
ミ,,゚Д゚彡 「ツンはな、今クーが呼んでる。クーっていうのはな」
ミ,,゚ -゚彡 「こんな顔したヤツだ。『わたしだ。好きなものは毒蝮三太夫だ』」
(;´・ω・`) 「村長、声マネまでしなくても……しかもちょっと似てるし……」
ξ゚听)ξ 「あのぉ……お呼びですか?」
( ^ω^) 「ツン! やっぱりキミも起きていたお! よかったお、また一緒だお!」
顔を見た。駆け寄らずにはいられなかった。確かに彼女はツンだった。
1000年の時間は、自分たちにとって一瞬だったけれど。
それでも、懐かしくて懐かしくてたまらない気持ちは、多分きっと、言葉が分からない孤独のせいだった。
( ^ω^) 「ツン!」
駆け寄ろう。抱きしめよう。また、ずっと一緒に――、
なんですかあなたはっ!ξ#゚听)ξ三○メ)^ω^) おぶぅっ!?
――あれ?
-
42 :1
:2007/11/16(金) 18:07:21.55 ID:y+sFl1ez0
- 川 ゚ -゚) 「……ツン?」
ξ#゚听)ξ 「何なんですかこのヒトっ!?」
ミ,,;゚Д゚彡 「あー、一応、知り合い……らしいんだが。お前の」
ξ#゚听)ξ 「はぁ!? わたし知りませんよ! 村長だって知ってるでしょ!
わたしはずっとあの村にいたし、『開かずの扉』の中には入ったことありません!」
ミ,,;゚Д゚彡 「だ、だよなぁ。いや、おれもおかしいとは思ったんだけどな」
頬が痛い。
ずぅっと液体にさらされ続けた皮膚が、ずるりと剥けてしまった。
でも、いちばん痛いのはそんなところじゃあない。
(; ^ω^) 「ツン!? ほら、ぼくだお!? よく思い出すお、ブーンだお!?」
ξ゚听)ξ 「……何て言ってるんですか?」
ミ,,゚Д゚彡 「ツンは、多分間違いなくお前さんのこった。ブーンはこいつの名前らしい。後はよく分からん」
川 ゚ -゚) 「……たまたま、知り合いに似ているのでしょうか。彼……ブーンの」
ミ,,゚Д゚彡 「顔も名前も……っていうのはすげぇ確率だと思うが、まぁ、多分そういうことなんだろうなぁ」
ξ゚听)ξ 「正直、迷惑ですっ!」
-
45 :1
:2007/11/16(金) 18:10:02.02 ID:y+sFl1ez0
- 彼らが、何か話をしている。ツンも、それに混じっている。
彼女は、明らかに「向こう側」だった。
(; ^ω^) 「(どうしてだお……? ツンがぼくのこと忘れるはずがないお……?)」
ξ゚听)ξ 「あのね! わたしはツンだけど、あなたの知り合いじゃないからね!」
何を言っているのかは分からない。けれど、どういうことを言っているのかは、分かる。
彼女の顔に浮かんでいるのは、拒絶、だ。
この時代と、自分たちの時代のかすかな共通点を、今は呪う。
彼女が、自分を拒絶していることが分かってしまうことを、呪う。
( ^ω^) 「(いや……待つお? そう言えば聞いたことがあるお。
コールドスリープから目覚めた直後は、記憶が混乱することがあるって……)」
そんな都合のいい事情があるんだろうか、と自分でも思う。
神さまが、そんな楽観的な隠し球を用意してくれることなんて、一度だってあっただろうか。
意地汚い考えだ。奇跡に等しい確率にしがみつく、醜い醜い希望的観測だ。
そもそも。そんな希望はあり得ないと知ったからこそ、自分は1000年の眠りについたのではなかったか。
-
46 :1
:2007/11/16(金) 18:13:00.03 ID:y+sFl1ez0
- ( ;ω;) 「…………」
泣くな! 泣くなよっ! 泣いても何にもならないだろうっ!
ξ゚听)ξ 「あ、え? なんか、その、このヒト、目から何かが、」
ミ,,゚Д゚彡 「あー。さっきもそうしてた。ナミダってエラーだそうだ。どっかがぶっ壊れてるのかもしれねー……けど、」
ξ゚听)ξ 「けど?」
ミ,,゚Д゚彡 「あのなー、さっきもそうだったんだよな。なんつーかなー、曰く言いがたいんだが、んー」
(´・ω・`) 「もしも目から何かをこぼすことが通常の機能であれば、それは特定の条件下で起こることになるね」
ξ゚听)ξ 「……? 意味がよく分からないんですけど……」
川 ゚ -゚) 「今の場合、ツンがその引き金を引いた、ということだ」
ξ゚听)ξ 「はぁ!? わたしですか!?」
(´・ω・`) 「ちょっと突き放しすぎたんじゃないの? 知り合いだと思ってたのに、いきなりあんな風にされたら、イヤだと思うよ?」
ξ゚听)ξ 「そっ、そんなの、あのヒトの勝手な勘違いで……、」
( ;ω;) 「…………」
ξ゚听)ξ 「…………」
-
47 :1
:2007/11/16(金) 18:15:42.68 ID:y+sFl1ez0
- やっぱり自分は、あのまま眠り続けていればよかったのだと思う。
そしてそのまま、誰にも見つかることなく、起きることもなく、ずっとずっと眠っていればよかったのだと思う。
そうすれば、ツンと一緒にいられた。
自分のコールドスリープカプセルは、そのまま自分の墓標となって。
ずっとずっと、そうしていればよかったのだと思う。
いや、今からでも決して遅くはない。
もう一度戻ろうか。あの、冷たいけれど暖かい胎内へ。
ξ゚听)ξ 「あ……あのね? 別に、あなたのことが嫌いなんじゃないんだからね?」
( ;ω;) 「(……お?)」
ξ゚听)ξ 「ただその、いきなりだったし、ビックリしちゃうし、分かるでしょう? ビックリよビックリ」
目の前のツンが、両手を大げさに掲げて、ただでさえ大きい目を見開いて見せる。
驚いている、のポーズ?
( ;ω;) 「驚いたのかお? それはごめんお」
ξ゚听)ξ 「だからあの、そのナミダっていうの、収めてよね? お願いだから。心配になっちゃうでしょ?」
手が差し伸べられる。
取るべきか取らざるべきか悩んで、やっぱり取った。
冷たかった。
-
51 :1
:2007/11/16(金) 18:18:39.83 ID:y+sFl1ez0
- 川 ゚ -゚) 「……正直、分からないな。なんでツンがあんなに慌てているのか」
ミ,,゚Д゚彡 「まぁなぁ。製造年が古いオレらにゃ分からんのかもな」
(´・ω・`) 「ぼくは、何となく分かるかな」
川 ゚ -゚) 「そうなのか?」
(´・ω・`) 「うん。っていっても、知識として、だけど。ツンはたまに、ああいう態度を取ることがある。
もしかしたら、ブーンのナミダと似たものなのかもね」
川 ゚ -゚) 「…………」
ミ,,゚Д゚彡 「うらやましいか?」
川 ゚ -゚) 「まさか。挙動が不安定なのは、わたしは落ち着かない」
ミ,,゚Д゚彡 「だろうな」
ξ゚听)ξ 「ほら。とりあえず村まで行きましょう?
あなた、表面温度が高すぎる。そんなんじゃ、演算素子が熱暴走起こしちゃうでしょ?」
( ^ω^) 「冷たいお。ツンの手。ねえ、キミは本当にツンかお?」
ξ゚听)ξ 「……あなた、タガはどこについてるの? 分かる? タガって」
( ^ω^) 「それとも……キミはツンじゃなくて、ツンは、別のどこかにいるのかお?」
-
52 :1
:2007/11/16(金) 18:21:24.56 ID:y+sFl1ez0
- ξ゚听)ξ 「村長、このヒト、タガはどこについてるんですか?」
ミ,,゚Д゚彡 「や、オレも分からん。それとも、ついてないのかもしれん」
ξ゚听)ξ 「えええ!? それって、ものっすごく古い子ってことですか!?」
川 ゚ -゚) 「充分あり得るだろうな。そこにあるの、QWERTY配列のキーボードだ。
キーボードがあるということは、演算装置との直接回線が結べないということだろう。
タガを持っていない可能性は高い」
ξ゚听)ξ 「そんな……でも、そうですよね……『開かずの扉』の中にいたんですもんね……」
ミ,,゚Д゚彡 「ま、詳しいことはビコーズに聞くしかねーさ。それでも分かんなきゃお手上げだがな」
ξ゚听)ξ 「……ブーン、一人ぼっちなんだ……」
ツンが、というか、ツンらしき子が、こっちを見ている。
なんだか哀れむような。それでいて、冷たい感じはしない。
分からない。確かに自分の知るツンは、ああいう目をする子だったと思う。
でも、多分彼女はツンじゃない。
どうしよう、どうしよう、どうしよう――?
手。
ξ゚听)ξ 「いっしょに、行こ?」
-
54 :1
:2007/11/16(金) 18:24:41.24 ID:y+sFl1ez0
- 手を取った。やっぱり冷たかった。それは、希望の温度なんだろうか。それとも、絶望の温度なんだろうか。
( ^ω^) 「……うん。そうするお」
ミ,,゚Д゚彡 「あー、OKってことらしいぞ」
ξ゚听)ξ 「え、分かるんですか?」
ミ,,゚Д゚彡 「あーいや。だが、首を縦に振ったらYES、横に振ったらNOってのは変わらんらしい。あー、そうだ」
ミ,,゚Д゚彡 「マジ?」
( ^ω^) 「マジ!」
(´・ω・`) 「マジ? なんのことだい?」
ミ,,゚Д゚彡 「やー、お前が眠りこけてる間に、ちっとな。YESは『マジ』だ、多分だけどな」
川 ゚ -゚) 「(根に持ってる……)」
ξ゚听)ξ 「試してみようっと! ブーン、マジ?」
( ^ω^) 「ツン、マジだお」
川 ゚ -゚) 「ホントに通じてるらしいな……マジか?」
( ^ω^) 「クー。マジマジ」
-
57 :1
:2007/11/16(金) 18:27:32.36 ID:y+sFl1ez0
- 川 ゚ -゚) 「ちょっと楽しい」
ミ,,゚Д゚彡 「あー、続きは村でだ。んじゃ行くぞ。ツン、ブーンを引っ張ってけ」
ξ゚听)ξ 「りょーかいです!」
――『開かずの扉』・外――
ミ,,゚Д゚彡 「んじゃ行くぞ――お?」
( ^ω^) 「!! !? !!!!」
ミ,,゚Д゚彡 「何だ? 連れてってもらえる喜びの踊りか?」
ξ゚听)ξ 「そ、そうでしょうか……なんかもっとこう、真に迫った感じが……あ、ブーン!」
( ^ω^) 「!!!!!!」
――『開かずの扉』・中――
( ^ω^) 「ぜはっ!? はぁっ、はぁっ、はぁっ、なんだお!? いきなり息ができなくなったお!?」
ξ゚听)ξ 「……ブーン? どうしたの?」
-
61 :1
:2007/11/16(金) 18:30:24.19 ID:y+sFl1ez0
- ミ,,゚Д゚彡 「どうしたんだ? 忘れ物か?」
(´・ω・`) 「……呼吸」
ミ,,゚Д゚彡 「あ?」
(´・ω・`) 「ブーンの肩が、激しく上下に動いている。多分あれは呼吸器系のエラーだよ」
ミ,,゚Д゚彡 「あ……呼吸器って言やぁ」
川 ゚ -゚) 「……この部屋の大気組成」
(; ^ω^) 「どういうことだお!? これじゃ外に出られないお?」
川 ゚ -゚) 「ブーン、ちょっと確認したい」
( ^ω^) 「お? クー? なんだお?」
川 ゚ -゚) 「……酸素、と言っても分からないだろうな……。O2。分かるか?」
クーが、空中に縦長の楕円を描き、その横に小さく、2、と書いた。
( ^ω^) 「O2……酸素? 酸素かお?」
ミ,,゚Д゚彡 「お? 通じたか?」
(´・ω・`) 「彼、ほんとにどこから来たんだろうねぇ? ぼくらとの接点がよく分からないな」
-
63 :1
:2007/11/16(金) 18:33:16.00 ID:y+sFl1ez0
- クーが、O2、と空中に書いて、小さく円を描く。
CO2、と、空中に書いて、今度は大きく円を描いた。
クーの人差し指が、封印区画の外を指す。
この外は、酸素が少なく、二酸化炭素が多い、ということらしい。
( ^ω^) 「困ったお……ぼくは、酸素がなければ生きていけないお……」
クーの指が再び動いて、何かの解決策を示してくれることを期待したけれど、どうやらそれはムリなようだった。
乏しい表情は何の変化もなく、ただ首をかしげて自分を見つめている。
( ^ω^) 「あ……! そうだ! 防護服があったお!」
部屋の隅に視線を走らせる。
機械だらけのインテリアの中で、ちょっと浮いてる安っぽいロッカー。
あの中に、確かあったはずだ。
万一、核戦争が起きた場合でも活動できるように、生命維持機能のついた防護服が。
-
64 :1
:2007/11/16(金) 18:36:10.15 ID:y+sFl1ez0
- ロッカーを、開けた。あった。1着だけ、防護服が。
( ^ω^) 「(!? 2着あったはずなのに……やっぱり1着ないお!? 間違いないお、ツンはどこかに出て行ったんだお……!)」
思わぬ希望もオマケについてきた。
これを着て、探そう。この時代のどこかにいるツンを。
ガサゴソ
( ^ω^) 「どうだお? 似合ってるかお?」
Σミ,,;゚Д゚彡 「うおお!? なんだ!? なんかカッコいいぞ!?」
(´・ω・`) 「ヒート・プロテクト・ギアか何かかな? あれを着れば、彼は外に出られるのかもしれないね」
ξ゚听)ξ 「訊いてみます!」
オールドムービーから抜け出してきた宇宙飛行士のような姿になったぼくに、ツンが駆け寄ってくる。
封印区画の外を指差して、
ξ゚听)ξ 「マジ?」
( ^ω^) 「マジ!」
-
69 :1
:2007/11/16(金) 18:39:25.15 ID:y+sFl1ez0
- ( ^ω^) 「(えっと……でも、一つ聞かないといけないお……。
燃料電池ってなんて言えばいいお……とりあえず、必要なものを伝えてみるかお……?)」
H2O、と空中に書いて、外を指さした。指さしてみた。
川 ゚ -゚) 「H2O……水、か」
(´・ω・`) 「! なるほど、再生型の燃料電池か」
ξ゚听)ξ 「……? 何ですか、それ?」
(´・ω・`) 「つまり、こいつは水をエネルギー源として酸素を供給し続けるんだ。もちろん、ある程度補給は必要だろうが」
ミ,,゚Д゚彡 「水なんざぁ幾らでもあるだろ。大丈夫だ」
ξ゚听)ξ 「ブーン、水はあるよっ!」
クーが、空中にH2O、と書いて、大きく円を描き、外を指す。
外には、水もあるらしい。よかった。それなら、ぼくはこの区画の外でも生きていける。
( ^ω^) 「あ・り・が・と・う・お」
ξ゚听)ξ 「うん、そうだよブーン! あ・り・が・と・う・お!」
川 ゚ -゚) 「(それは、なんか違うんじゃないかなぁ……)」
-
73 :1
:2007/11/16(金) 18:42:29.28 ID:y+sFl1ez0
- ――268番村・村長屋敷――
( ∵) 「で、彼がその廃棄されてたらしきヒト、なの?」
ミ,,゚Д゚彡 「おうよ。タガぁ見当たんねーし言語は分かんねーし、酸素と水がなきゃ生きていけねーってよ」
( ∵) 「……なるほど」
( ^ω^) 「こ、こんにちは、ですお。ぼくはブーンですお」
ξ゚听)ξ 「ブーンっていう子らしいです」
川 ゚ -゚) 「タガのことを除けば、特に外見は我々と変わらない」
(´・ω・`) 「ちょっと造形が美しくないけどね」
( ∵ )
( ∵) 「……村長は分かるんだけど、何でキミらまでついてきてるの?」
ξ゚听)ξ 「えあっ、なんかほっとけないじゃないですか!」
( ∵) 「……クーも?」
川 ゚ -゚) 「まあ、付き合いもあるしな」
-
74 :1
:2007/11/16(金) 18:45:29.89 ID:y+sFl1ez0
- ( ∵) 「ふぅん……まぁいいや」
(;´・ω・`) 「え? ぼくには『なんで一緒にいるのか』って聞かないのかい?」
( ∵) 「というか、キミはどうして持ち場の監視所にいないのかが不思議」
川 ゚ -゚) 「まったくだな」
(;´・ω・`) 「だ、だってぼくもあの場にいたんだから。知る権利くらいあるだろ?」
ミ,,゚Д゚彡 「権利ってのぁ、義務を遂行してはじめて発生するって知ってっか?」
(´・ω・`) 「……はいはい、戻りますよ……」
ミ,,゚Д゚彡 「居眠りを不問にしてやるだけマシと思え」
( ∵) 「さて、じゃあブーンくんの方だね」
そう言って、顔面のパーツがすべて点でできたような男がこっちを向いた。
クーも表情に乏しいけれど、彼はその点において、クーの比じゃないと思う。何なんだお前は。ジェイソンなのか。
ξ゚听)ξ 「ブーン、怖くないからね。このヒトはビコーズさん。物知りなんだよ。きっとブーンのことも知ってるよ」
少しだけ腰が引けていたぼくの手を、ツンが握ってくれる。
防護服の厚い装甲越しだけれど、大丈夫だ、というツンの気持ちが伝わってきた気がした。
-
76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
:2007/11/16(金) 18:48:32.48 ID:y+sFl1ez0
- ミ,,゚Д゚彡 「後は、ナミダっつーエラーだな。オレが見た限りでは2回ほど出てる」
( ∵) 「……ふんふん。ブーンくん、ちょっと何か喋ってみてくれないか?」
男が、こっちを向いて何か言っている。
(; ^ω^) 「ごめんなさいお……なに言ってるか全然分かりませんお……」
( ∵) 「ふぅん、なるほどねぇ……」
何に満足したのかはよく分からないけれど、男はひとつ頷いた。
ξ゚听)ξ 「あ、あとはですね、……ブーン、マジ?」
( ^ω^) 「ま、マジ……? ツン、何が……?」
( ∵) 「マジ、ね……」
彼は、何をしているのだろう?
いやおそらく、闖入者である自分を調べているんだろうけれど。だとすれば、何を?
( ∵) 「んー、じゃあまず、分かったことから言おうか」
-
78 :1
:2007/11/16(金) 18:51:35.19 ID:y+sFl1ez0
- ( ∵) 「彼の言葉は、5進数を基盤とする言語だ。12進数を基盤とするぼくらのそれとは、根本から異なる。
あくまで特徴だけの判断だけれど、神聖言語に近い。少なくとも、相当古い言語なのは間違いないね」
ξ゚听)ξ 「神聖言語……って、オリジン・スペシフィーとかに書いてある言語、ですよね……?」
( ∵) 「そうだね。あれは、もう1200年も前の設計図だ。だとすれば、彼がタガを持っていないのも説明はつく」
ミ,,゚Д゚彡 「……古いヒトだと思っちゃいたが、1000年単位でかよ……」
( ∵) 「いや、村長、それも違う。おそらく彼は、ヒトじゃないよ」
川 ゚ -゚) 「ヒトじゃない……?」
( ∵) 「うん。多分彼はヒトじゃない。ヒトの素になったものだ。彼らの言葉では……ニンゲン、だね」
ξ゚听)ξ 「ニンゲン……ねえブーン、あなたはニンゲンなの?」
ツンが、何かを問うた。
人間、と、そう聞こえた気がする。
( ^ω^) 「(……? どういうことだお……? ぼくは人間じゃないって思ってるのかお……?)」
( ^ω^) 「ぼくは人間だお。ブーン、人間」
ξ゚听)ξ 「! ビコーズさん、ブーンはニンゲンだって!」
(; ^ω^) 「(人間じゃないって……さすがにちょっとショックだお)」
-
81 :1
:2007/11/16(金) 18:54:37.90 ID:y+sFl1ez0
- 答えを聞いた彼らは、一様に驚いた顔をした。
あのジェイソンっぽい男ですら例外じゃない。
どういう意味だろう。ふと、疑問に思う。
自分が人間かどうかの確認。なんだか、少しズレている気がする。
――いや?
そうだ。自分のことで手一杯で、忘れていた。
今、自分の周りには、酸素はなくて、二酸化炭素があるのだ。
だとすれば。
だとすれば、そんな環境下でも平然と生きていられる彼らは……なんだ?
(; ^ω^) 「(そうだお……逆だお。彼らこそ人間じゃないお……?)」
確認してみよう。確認する必要がある。
-
85 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
:2007/11/16(金) 18:57:42.96 ID:y+sFl1ez0
- ( ^ω^) 「ツン……人間、マジ?」
ツンは――首を振った。横に。
ξ゚听)ξ 「ツンたち、人間、マジじゃないよ。ツンたちは、ヒト」
首を横に振りながら、腕でバッテンを作りながら、ツンは「人間」という単語を口にした。
人間じゃない。
人間じゃない……?
(; ^ω^) 「きっ、キミらは何なんだお? 人間にしか見えないお?」
σξ゚听)ξ 「分かるかな。ツ・ン、ヒ・ト」
ツンは自分を指差して、ヒト、と言った。彼女は、ヒトなのに人間ではない、らしい。
なんだ、それは。
(; ^ω^) 「キミの言ってる意味が分からないお。人間、ヒト、マジ?」
言っておきながら、無茶だな、と思った。
伝えようとしているこの疑問はしかし、形にすることができない。自分は、あまりにも無知だった。
-
87 :1
:2007/11/16(金) 19:00:39.88 ID:y+sFl1ez0
- ( ∵) 「人間、ヒト、マジ……か。ちょっと意味が分からないね」
ミ,,゚Д゚彡 「そうだなぁ。ったく、せめてタガがありゃーよう。データでも何でも流し込んで会話ができるんだが」
ξ゚听)ξ 「……人間、ヒト、マジ。……ねえ、もしかして、」
ツンが、そばにあった紙に何かを書き始める。
そういえば、まだこの時代にも紙メディアは生き残ってるんだな、と、妙にピントのボケたことを思う。
紙には、ものすごく汚い字で、こう書いてあった。
0A71B1 = 08BB95A23。
ξ゚听)ξ 「ねぇ、分かる? ブーン」
何だそれ。
アラビア数字と、多分、アルファベット。
アルファベットが生きている、ということは、彼らは英語なら話せるんだろうか?
いや、多分ムリだ。彼らの話す言葉は、明らかに英語じゃない。
ξ゚听)ξ 「……ヒト」
ツンが、0A71B1と書かれた方を指して、そう言った。
-
88 :1
:2007/11/16(金) 19:03:16.24 ID:y+sFl1ez0
- ( ^ω^) 「……ヒト」
口の中で転がすように反芻する。
0A71B1、という冷たい文字列は、ヒト、を意味しているんだろうか。
ξ゚听)ξ 「そう。マジ。これは、ヒト」
デキの悪い小学生に九九を教えるような口調で、ツン。
彼女の指が、ゆっくりと、今度は08BB95A23の方へ移動する。
ξ゚听)ξ 「これはね、ニンゲン」
必要以上にゆっくりとした発音で、ツンはそう言う。
なるほど。0A71B1がヒトならば、08BB95A23は人間、というワケか。
となると、間の=は、やっぱり自分の知っている意味と同じなんだろうか。
( ^ω^) 「……人間」
ξ゚听)ξ 「そう。これはニンゲン、マジだよブーン。それでね――、」
ツンが、再びペンを取る。
0A71B1と08BB95A23の架け橋になっていた=に、スラッシュを書き加えた。
――ヒトと人間は、違うものらしかった。
-
91 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
:2007/11/16(金) 19:05:49.18 ID:y+sFl1ez0
- ( ^ω^) 「…………」
紙を見る。ツンの字は、とても汚い。
それも、とても特徴のある汚さをしている。角張っていて、どこか書きなれていない感じがする。
0A71B1 ≠ 08BB95A23。
なんだかそれは、とてもとても遠い、自分とツンたちとの距離だった。
( ^ω^) 「人間、ヒト、違う。ツン、ヒト。ブーン、人間」
口に出してみる。身振り手振りを加えて、精一杯に意思を伝えてみる。
バカバカしいと言えば、バカバカしいのだ。
ワケが分からないと言えば、ワケが分からないのだ。
人間とヒトが違うというのであれば、ヒトであるツンは、目の前のツンは、本当に一体、なんなんだろう。
ξ゚听)ξ 「そうだよ! ブーン、マジ!」
ツンは、喜色を浮かべて手を取ってくれる。
熱も刃も銃弾も遮断するはずの装甲越しなのに、あの冷たい手の感触がする気がした。
ここは、どこだ。
彼らは、なんなんだ。
-
94 :1
:2007/11/16(金) 19:08:52.42 ID:y+sFl1ez0
- 川 ゚ -゚) 「なるほど、ツンが一番ブーンのことを分かるようだ」
ミ,,゚Д゚彡 「ビコーズの方はどうなんだ? こいつの5進数言語、肝心の中身は分かるのか?」
( ∵) 「いや、さすがにそこまでは。そんなことができたら、ぼくはきっとこの村にはいない。所詮はポンコツだからね、ごめん」
ミ,,゚Д゚彡 「……あ、いや、そういう意味じゃねえ。悪い」
( ∵) 「いや。いい。それに、彼こそこの村にあつらえ向きなのかもしれないよ。
ニンゲンなんて、もう500年も昔に滅びてしまった、水も酸素もなくては生きられない、完全無欠のポンコツだ」
ξ゚听)ξ 「……ポンコツ、か。ブーンも、わたしたちの仲間なんですね」
( ∵) 「彼がそう思うかは分からないけどね。何しろぼくらはヒトで、彼はニンゲンだ。差別は抜きにしてもね」
ξ゚听)ξ 「……ブーン……」
宇宙人なんだろうか。
いや、多分違うだろうな。ツンの書いたあの文字、アレは、汎用マニピュレータの筆跡にとてもよく似ている。
それに、0〜9の数字とABで表記されたあの文字は、12進数で表現される彼らの「言語」なんだろう。
彼らの言う「ヒト」というのは、多分、ロボットのことなんだと思う。
では、彼らの言う「人間」は、どこへ行ってしまったのだろう。
ここは「ヒト」たちの居住区で、人間は、どこか別の場所に暮らしている、とか。
いや、それは疑わしいかな。もしヒトの他に人間がいるとすれば、人間は、必ずヒトたちに人間の言葉を教え込むだろうから。
いなくなってしまったのだろうか。人間は。何をか、絵空事に出てくるような愚かな最終戦争でもやって。
-
97 :1
:2007/11/16(金) 19:11:54.11 ID:y+sFl1ez0
- まぁ、しかし、モノは考えようか、とも思う。
偉そうに人間だと言ってのけたこの身も、厳密に言えばもう、半分くらいは人間じゃない。
セラミックの強化骨格だって入っているし、内臓の多くも生化学の産物の代用品だ。
ある意味では、自分だって「ヒト」なのだ。少なくとも、半分くらいは。
――彼らが、そういう風に思うかは、分からないけれど。
( ∵) 「ニンゲンの言葉なんだとすれば、多分どこかのデータベースには幾らかの資料は残ってると思うよ。調べてみる。
――ああ、それから」
ξ゚听)ξ 「はい? なんですか?」
( ∵) 「ぼくも、幾らかは知ってる。ぼくらとブーンくんとの関係はね、『トモダチ』って言うんだ。多少語弊はあるかもしれないけどね」
ξ゚听)ξ 「トモダチ、ですか……」
ξ゚听)ξ 「ブーン、トモダチ?」
そうきたか。
友だち、なんだろうか。いや、彼らの言う「友だち」は、ぼくの知る「友だち」と同じものなんだろうか。
分からない、けど、
( ^ω^) 「ツン、さっきの紙、少し借りるお」
ξ゚听)ξ 「え? ……紙?」
-
102 :1
:2007/11/16(金) 19:14:30.73 ID:y+sFl1ez0
- 0A71B1 ≠ 08BB95A23。
ツン、これは少し違う。厳密に言えば、ぼくたちは、こうだ。
0A71B1 ≒ 08BB95A23。
ξ゚听)ξ 「……あ」
川 ゚ -゚) 「トモダチ、っていうことでいいんじゃないかな、これは」
ミ,,゚Д゚彡 「そうだなぁ。少なくとも見た目は一緒なんだしよ。ノットイコールってこたぁねぇかもな」
ξ゚听)ξ 「……うん。トモダチ、トモダチだね、ブーン!」
( ^ω^) 「うん、ブーン、ツン、クー、友だちだお」
( ∵) 「……ぼくら、ガン無視だね」
ミ,,゚Д゚彡 「……そういや、名前教えてねーな」
ちょっと脚が震えていた。防護服を着ていてよかった。きっとみんなにはバレてない。
ともかく、そうだ。拒絶されなくて、よかった。
ねぇ、ツン。人間のツン。目の前の彼女がヒトで、キミじゃないなら、やっぱりキミは、この時代のどこかにいるのかな。
1000年前に願った幸せが、この時代には、あるかな?
-
104 :1
:2007/11/16(金) 19:17:34.42 ID:y+sFl1ez0
- ――それから少しして――
( ∵) 「うん、やっぱりタガはないね。体温も高い。脈拍もあれば呼吸もしてる。ニンゲンで間違いないんじゃないかな」
ミ,,゚Д゚彡 「しっかし、とんでもねーもん拾ってきちまったな」
( ∵) 「とんでもないついでなんだけどね。ニンゲンって、食料を摂らないといけないんだよね」
ξ゚听)ξ 「……食料?」
( ∵) 「うん。彼らの言葉で『タベモノ』だ。経口摂取して、肛門から排泄される」
ミ,,゚Д゚彡 「……要はオレらのバッテリーと同じなんだろうが、なんか効率悪そうなエネルギー源だな。充電してやったらいいんじゃねーか? 案外気に入るかもしれねーぞ」
( ∵) 「……機能停止すると思うよ、多分」
川 ゚ -゚) 「酸素と水の他に、そんなものまで必要なのか。難儀だな、ニンゲンは」
ξ゚听)ξ 「ブーン、タベモノ?」
(; ^ω^) 「(……そう言えば、すっかり忘れてたけど、何も食べてないお……。
でも、食料なんてあるのかお? 彼らもモノを食べるのかお……?)」
(; ^ω^) 「……お。食べ物。お腹減ったお……でも、食べ物あるのかお?」
ξ゚听)ξ 「……タベモノ、欲しいみたいですけど」
ミ,,゚Д゚彡 「そういや、タベモノって具体的になんなんだ?」
-
107 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
:2007/11/16(金) 19:19:27.80 ID:y+sFl1ez0
- ( ∵) 「んー、内容まではちょっと……。でも、生体部品培養用の高タンパクゲルでいいんじゃないかな?
ニンゲンは、生体部品の塊のようなモノだ、と聞いたことがあるよ」
ミ,,゚Д゚彡 「おう、そうかい。なら工場長に問い合わせりゃ幾らでもあるな。クー、ちょっと連絡してくんねーか?」
川 ゚ -゚) 「了解した」
クーがいきなり立ち上がって、壁に設置された何かの機械の前に立つ。
クーの指が無造作にうなじに伸ばされて、長い髪の下から、
Σ(; ^ω^) 「おっ!? なんだおっ!? なんか、ものすごくグロテスクな金属部品が!?」
生えていた。ものすごくグロテスクな金属部品が。クーのうなじから。
クーが、その金属部品からコードを引っ張って、壁の機械につなぐ。
ξ゚听)ξ 「ブーン、アレはね、タガだよ。タ・ガ。あれで連絡してるんだ」
タガ。箍、だろうか。
それが、あの金属部品の名前なんだろうか。
ξ゚听)ξ 「わたしもね、あるんだよ? ほら、ここ」
-
109 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
:2007/11/16(金) 19:20:58.39 ID:y+sFl1ez0
- 何かを言って、ツンはいきなり、シャツの胸元をはだけた。
見えた。タガも見えたし、色々見えた。
Σ(; ^ω^) 「おぶぅっ!? 何してるお!? わ、分かったからさっさとしまうお!」
思ったより小さくて、多分自分の知ってるツンのより小さくて、いやそういうことはどうでもよくて、違う。
とにかく、あった。このツンの胸元にも、あのグロテスクな金属部品が。
どうやら、ヒトたちはみんな、あの「タガ」を持っているらしかった。
ξ゚听)ξ 「ブーンにはタガある? ブーン、タガ、マジ?」
( ^ω^) 「マジじゃないお。バツ、ばってん!」
腕をクロスさせて否定を表現する。バッテンマークも、数少ない意思疎通の手段だ。
あの「タガ」は、どんな機械なんだろう。
クーは、あれで何をしているのだろう。
聞きたいけれど、多分ムリだろうな。語彙が少なすぎて、理解できないだろう。
あと、「ヒト」は自分の身体を晒すことについてどう思っているのか、とか、ちょっと思う。
-
112 :1
:2007/11/16(金) 19:24:05.44 ID:y+sFl1ez0
- ――さらにしばらくして――
从 ゚∀从 「ちーっす、呼ばれて飛び出て工場長だぞー」
ミ,,゚Д゚彡 「おっせーよ。何分待たすんだ」
从 ゚∀从 「あのなぁ、こっちも仕事してんだよ仕事。あんたみたいに余計なトコをフサフサさせてハゲ散らかすヒマはねーんだ」
ミ,,゚Д゚彡 「意味が分かんねーよ! それにこれは生まれつきだ!」
从 ゚∀从 「生まれた瞬間からそんなだもんなぁ、アンタにゃ同情するよ」
ミ,,゚Д゚彡 「……背中に気をつけろよコンチクショー……」
川 ゚ -゚) 「それで、例のモノは持ってきてくれたのか?」
从 ゚∀从 「ああ、高タンパクゲル3種類だろ? 全部10キロずつ持ってきたけどよ、何に使うんだこんなの」
( ∵) 「や。実はね。村長たちが、ニンゲンを拾ってきちゃったんだな」
从 ゚∀从 「はぁ? ニンゲン?」
( ∵) 「うん。ま、ぼくらヒトのご先祖さまみたいなものだね」
从 ゚∀从 「はー。そいつが高タンパクゲル召し上がるってかい。ご先祖はずいぶん粗末なエネルギー使ってんだな」
从 ゚∀从 「ま、興味ねーや。ブツぁコイツだからよ」 (ドサッ
-
117 :1
:2007/11/16(金) 19:27:07.37 ID:y+sFl1ez0
- なんだか白くてぶよぶよした、ウミウシのお化けみたいなものが、目の前のテーブルに置かれた。
――悪い予感がする。
ウミウシのお化けを指差して、
(; ^ω^) 「ツン、食べ物?」
ξ゚听)ξ 「うん! タベモノだよ、ブーン!」
力いっぱい頷かれた。
(; ^ω^) 「(これ……食えるのかお……?)」
从 ゚∀从 「おー、そいつがご先祖さんかい。やーはー、アタシが工場長だぞ」
川 ゚ -゚) 「……さっき興味ないって言ったくせに」
从 ゚∀从 「だってよぉ! なんかカッコよくね!? 何だあの格好!」
ξ゚听)ξ 「ニンゲンは、酸素がないと生きていけないみたいなんです。で、あの服が、酸素を作る機械みたいなもので」
从 ゚∀从 「へぇ! ご先祖さんはパンクなカッコしてたんだな!」
( ∵) 「いや、この1000年で大気の組成は激動したみたいだから、昔はアレを着なくても――、」
从 ゚∀从 「ンなこたどうでもいいんだよ! アレ着てーなー、貸してくんねーかなー」
-
119 :1
:2007/11/16(金) 19:30:08.44 ID:y+sFl1ez0
- 川 ゚ -゚) 「直接聞いてみたらどうだ?」
从 ゚∀从 「いいのか! おうご先祖さん、ちょっとその服貸してくんねーか! カッコいいから!」
(; ^ω^) 「お? ぼくに話しかけてるのかお? ごめんなさいお、ちょっと言葉が分からないんだお……」
从 ゚∀从 「…………」
从 //゚∀//从 パァァァァァッ 「おいおいおいおい、なんだこのイカした言語!?」
ミ,,゚Д゚彡 「どっちかっつうと、お前がイカレてんじゃないか」
从 ゚∀从 「なんでだよ! なんだ今の、ゴ・メ・ン・ナ・サ・イ・オ? 呪文!? なぁそれ呪文!?」
(; ^ω^) 「(なんだお、このヒト……ちょっとイカレてるのかお……?)」
ξ゚听)ξ 「ああもうっ、工場長、離れてください! ブーンも困ってます!」
从 ゚∀从 「ご先祖さんはブーンっていうのか……ヤベぇ、ブーン、今日泊まるトコとか決まってんのか?」
川 ゚ -゚) 「いや、まd」
ξ゚听)ξ 「わたしのところです! ブーンはわたしのところに泊まるんです!」
川 ゚ -゚) 「(……そうだっけ?)」
从 ゚∀从 「なんだよー、もう決まってんのかー。残念だなー。なーなー、ブーン、明日はアタシんトコに来ねー?」
ξ゚听)ξ 「ブーンは言葉が分からないんです! だから、聞いても分かりません!」
-
126 :1
:2007/11/16(金) 19:33:12.54 ID:y+sFl1ez0
- なんだか賑やかなヒトだなぁ、と思う。
何を言ってるのかはまったく分からないけれど、何かを熱心に語りかけてくれている。
こんなロボットは、自分の時代にはいなかったな、と思う。
押しが強いというか、ロボット三原則そこのけというか。
彼らは「ヒト」で、「ロボット」とはまた少し違うのかもしれない。
( ^ω^) 「友だち」
だから、言ってみた。このヒトは、どんな反応を示すんだろう。
从 ゚∀从 「トモダチ!? トモダチって何だ!? お泊まりオッケーってことか!?」
( ∵) 「いや、なんというか……存在が近い、っていう意味かな。彼らの言葉だよ」
从 ゚∀从 「うおお! やったぜ! トモダチ、ブーン、高岡とトモダチな!」
ああ、この子は「高岡」と言うのかな。
この短時間でも、何となくヒトたちの言いたいことが分かるようになってきたと思う。
何というか、そう、彼らにはクセがあるんだ。個性と言い換えてもいい。
それは、もしかしたら、人間なんかよりもよっぽど。彼らは、自分を持っている。
それが単純にプログラムされたものなのか、それとも彼らの獲得したものなのかは分からないけれど。
-
128 :1
:2007/11/16(金) 19:35:18.06 ID:y+sFl1ez0
- ( ^ω^) 「高岡、ブーン、友だちだお」
从 ゚∀从 「トモダチだな! よぉっし、トモダチは何をするモンなんだ!?」
( ∵) 「別に何もしないと思うよ。あ、一緒にタベモノを摂取したりはするかもしれない」
从; ゚∀从 「摂取するって……高タンパクゲルを?」
( ∵) 「そう。ちなみに、人間はそれを経口摂取する」
从; ゚∀从 「……口に入れるの? これを?」
( ∵) 「そう。そして飲み下す」
从; ゚∀从 「……ニンゲンのトモダチって、難しいんだな……」
ビコーズと、特に高岡が、何やら恐ろしげな目で、例のウミウシのお化けを見ている。
そんな目をするなよ……。キミら、それを食べろって言ってるんだぞ……。
(; ^ω^) 「高岡も食べるかお?」
从; ゚∀从 「何言ってるのか分かんねーけど、ヤな予感するからやめとくな」
ξ゚听)ξ 「否定は、こうですよ。ばってん」
ツンが、胸の前で腕をクロスさせる。
意味が通じたワケではないんだろうけど、まぁ、やっぱり食べることはしないんだろうな、彼らは。
-
135 :1
:2007/11/16(金) 19:37:59.27 ID:y+sFl1ez0
- って、そういえば、このウミウシのお化けをどう食べればいいんだろう?
防護服がなければ、自分は呼吸をすることができない。けれど、防護服には、モノを食べるための都合のいい穴は存在しない。
……バイザーを開いて息を止めて、あれを口に含んですぐに閉じる、しかない。のか。なんかすごくマヌケだ。
(; ^ω^) 「(困ったお……どんどん『食卓』のイメージから遠のくお……)」
とりあえず、当面はそうするしかないんだろうな。
住環境は、これから整えていくしかないだろう。
かしゃ。
覚悟を決めてバイザーを開け、手づかみでウミウシのお化けを口にして、すぐにバイザーを閉める。
もしゃもしゃ。
食べる。
みんなが、呆気に取られた目で見ていた。
ミ,,゚Д゚彡 「おぉ……摂ったぞ?」
( ∵) 「そりゃ摂るだろうね、ニンゲンだからね」
从 ゚∀从 「アタシが持ってきた高タンパクゲルだ! まだ幾らでもあるからな、好きなだけ摂れ!」
-
138 :1
:2007/11/16(金) 19:40:45.85 ID:y+sFl1ez0
- ( ^ω^) 「(お……? 見た目ほど悪くはないかもしれないお?)」
口の中がどうしようもなくベタついているのは、正直言って気持ち悪い。
でも、味そのものは意外と悪くない、と思う。
この味はなんだろう。
目隠しをしてモノを食べると味が分からないと言うけれど、本当だ。――バナナかな?
ξ゚听)ξ 「……どう、なのかな。大丈夫かな、エラーとか……?」
ミ,,゚Д゚彡 「んー、別にいいんじゃないのか? 自分から摂ってるし、特にヤバそうにゃなってねーし」
从 ゚∀从 「ったり前だ! あたしが持ってきたんだぞ! ブーンに悪いワケがねーよ!」
全員の注目が集まっている。
やっぱり、何か感想を言うべきかな、と思う。理解はきっと、されないだろうけど。――いや、もしかしたら?
( ^ω^) 「おいしいお」
从 ゚∀从 「おいしいお? 何て意味かな? もっと! って意味かな?」
( ∵) 「感謝、じゃないかな。彼にとって必要なものを、キミが提供したんだから」
从 ゚∀从 「!」
-
141 :1
:2007/11/16(金) 19:44:00.71 ID:y+sFl1ez0
- ――数十分後――
(; ^ω^) 「おえっぷ」
一口食べるたびに、高岡が嬉しそうな顔で「おいしいお!?」と言ってくるものだから、ついつい食べ過ぎてしまった。
なんだか、ものすごく胃に溜まる食べ物だな、と思う。
今さらだけれど、材料とか大丈夫なんだろうか。まさか食べて死ぬってことはないよな?
从 ゚∀从 「おいしいお? ブーン、おいしいお?」
(; ^ω^) 「おいしいお……でもごめん、もう食べられないお……」
だいたいこれ、何日分で見積もった量なんだろう。
さっきからずいぶん食べたのに、一向に減る気配がない。
……まぁ、食うに困らないのは、ありがたいことではあるにしても。腐ったりとかしないだろうか。
ちょっと心配が家庭的すぎるかな?
(; ^ω^) 「バツ。食べ物バッテン」
ξ゚听)ξ 「あ……もういいみたいですよ」
从 ゚∀从 「え? ホント? なんだよー、全然減ってないじゃんか。30キロ持ってくんの、大変だったんだぞ」
ミ,,゚Д゚彡 「悪ぃな。ブーンが、タベモノをどんだけ必要か分かんなかったんだ」
-
143 :1
:2007/11/16(金) 19:47:03.95 ID:y+sFl1ez0
- 从 ゚∀从 「……まぁいいや。なくなったらまた連絡してくれよな。
ブーン、またちょくちょく来るぜ。そん時までに、ちったぁ共用語も覚えといてくれよ。じゃなっ!」 (バタン
ミ,,゚Д゚彡 「……言葉、か。実際どうすりゃいいんだろうな」
( ∵) 「さっきも言ったけど、どこかのデータベースには、彼の言語の資料も少しは残ってるはずだ。
ぼくがそれを調べる。後は、それを足がかりにみんなで共用語を教える。それしかないだろうね」
川 ゚ -゚) 「……というか、そもそもブーンはいつまでここにいるつもりなんだろうな」
ミ,,゚Д゚彡 「さぁなぁ。どこかへ行くアテでもあんのか、そもそも何でニンゲンが動いてんのか、聞かにゃ分からんだろうなぁ」
( ∵) 「意外と、本人も分かってなかったりしてね」
ξ゚听)ξ 「(…………)」
( ^ω^) 「(? ツンがこっち見てるお?)」
ξ゚听)ξ 「(ブーンに、どこかへ行くアテなんてあるのかな……?
ブーンはもう、一人ぼっちのポンコツなんでしょう?)」
(; ^ω^) 「(ヤバいお……全然分からないお……そもそもぼくは、昔から空気読むのとか苦手だお……)」
(; ^ω^)v 「ぶ、ぶい」
ξ゚听)ξv 「ぶい?」
-
145 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。
:2007/11/16(金) 19:50:15.65 ID:y+sFl1ez0
- ああ、汎用マニピュレータでも、器用にブイサインをするんだなぁ。なんて。
( ^ω^)v 「フサギコー、ブイ」
Σミ,,;゚Д゚彡v 「お、おれか? ぶい」
( ^ω^)v 「クー、b」
川 ゚ -゚)v 「ぶい」
( ^ω^)v 「ビコーズ、ぶいだお」
( ∵) v 「ぶい、だね」
ξ゚听)ξv 「ブイって、どういう意味かな?」
( ∵) v 「さぁねぇ?」
川 ゚ -゚)v 「お前のことなんか大っキライ、という意味かもしれないな」
ξ゚听)ξv 「も、もっと希望を持った方がいいよ! きっと、何かおまじないとか、そういうのだよ!」
Σミ,,;゚Д゚彡 「(ギクぅっ……)」
ヒトたちは、自分の手が作ったブイサインを不思議そうに見つめながら、何かを話し合っている。
そうか。彼らは、ブイサインを知らないのか。
うん、ブイサインの意味も、これから教えてあげよう。何しろ時間はたっぷりあるんだから。
-
150 :1
:2007/11/16(金) 19:53:08.04 ID:y+sFl1ez0
- @
それから幾日かは、あっという間に過ぎた。
まずは住環境を整えることが急務だったし、ヒトたちはヒトたちで、ぼくに言葉を教えようとしてくれているみたいだった。
(; ^ω^) 「おあふっ!? ツンと一緒に住むのかお!?」
ξ゚听)ξ 「ブーン? どうしたの? 早く入っておいでよ」
幾つかのことを覚えた。彼らにできて、自分にできないこと。自分にできて、彼らにできないこと。
簡単な意思疎通の方法と、少しだけ、言葉も。
( ^ω^) 「は、はじめまして、ブーンですお。お名前はなんて言いますお?」
m9( ´_ゝ`) 「プギャー! なんだこいつ! 言語野がぶっ壊れてやがんぞ!」
ξ;゚听)ξ 「そういうワケじゃないんです。ただ、ブーンは共用語を知らないんですよ」
(´<_` ;) 「見たところタガもないじゃないか……何なんだ、彼は」
この村のことも。ツンやクーたち以外にも、何人かの「トモダチ」ができた。
彼らはやっぱり、強烈な個性を持っていた。
-
156 :1
:2007/11/16(金) 19:55:22.96 ID:y+sFl1ez0
- ξ゚听)ξ 「よし……っと。ブーン、多分これで大丈夫だよ。……えっとね、O2。いっぱい!」
从 ゚∀从 「多分じゃない、絶対大丈夫だ! アタシが保障するぜ!」
機械に強いらしい高岡の協力を得て、ツンの家に与えられた部屋には、酸素供給装置を取り付けてもらった。
やっぱり食事は大変だったし、防護服は決して快適さを考慮して設計されてはいなかったから。
……あとは、まぁ、その。防護服を着ての排泄は、食事なんかよりも、よっぽど大変だったし。
( ^ω^) 「(カポッ)……あ、ホントだお! 息ができますお! O2、いっぱい!」
ξ゚听)ξ 「うんうん、O2!」
( ^ω^) 「高岡、あ・り・が・と・う・お!」
从 ゚∀从 「お、おぉ? ありがとうお?」
ξ゚听)ξ 「感謝、みたいですよ」
从 ゚∀从 「……おいしいお、の他に、ありがとうお、もあるのか……ニンゲンは難しいな……」
ヒィィィィィィィィィンッ!
ξ゚听)ξ 「あ、トリだ! ブーン、トリだよ!」
-
157 :1
:2007/11/16(金) 19:56:57.39 ID:y+sFl1ez0
- そうそう、予期しないいいニュースもあった。
甲高い音につられるように、窓の外に視線を向ける。
空のずっと高く。長い長いヴェイパー・トレイルを引いて。
独立可動翼18枚、エンジン5基、全長は多分、5メートルと少しくらいの、彼らが「トリ」と呼ぶ翼。
( ^ω^) 「……飛行機」
从 ゚∀从 「? ヒコーキ? ちげーぞブーン、ありゃトリだ」
ξ゚听)ξ 「……もしかしたら、ヒコーキって言うのかもしれませんね。ブーンの言葉では」
从 ゚∀从 「そうなのか。ブーン、トリが好きなのか?」
ξ゚听)ξ 「よく、分からないんですけど。ブーンは、昔、鷹匠だったみたいなんですよ」
从 ゚∀从 「ええええ!? ブーン、トリに乗ってたのか!?」
ξ゚听)ξ 「いえ、分からないんですけどね。でも、トリが飛んでると必ず空を見るんです。見えなくなるまで」
从 ゚∀从 「へぇ……」
⊂二ξ゚听)ξ二⊃ 「あ、面白いこともしてましたよ。こうやって、両手をトリみたいに広げて、ブーンって」
从 ゚∀从 「そっかぁ。……そうなのかぁ……トリねぇ……」
ξ゚听)ξ 「? なんですか?」
从 ゚∀从 「あ、いや、なんでもないぜ、っと」
-
158 :1
:2007/11/16(金) 19:58:58.30 ID:y+sFl1ez0
- この時代にも、飛行機がある。
パイロットだった頃を思い出す。ガンナーシートにツンを乗せて、何十時間も飛んだっけ。
驚いたことに、自分たちの眠った封印区画のある「塔」は、この時代まで生き残っていた。
高く高く、頂上がけぶって見えないほどに高いあの建物の周りを、ゆっくりと旋回する。
今、あの空から地上を見たら、どんな眺めなんだろう。
( ;ω;) 「…………」
Σ从; ゚∀从 「お、おい、なんかブーンの目にエラーが、」
ξ゚听)ξ 「あ。それ、ナミダっていうみたいです。エラーなのかどうかは、微妙だってビコーズさんが」
从 ゚∀从 「じゃあ、アレは機能なのか? ……すげぇなおい、ますますカッコいいぜブーン……!
アレってどうやるんだろうな? アタシにもできるかな?」
ξ゚听)ξ 「視覚素子に水をたらせばできるんじゃないですか?」
从 ゚∀从 「なるほど! 早速やってみるぜ! ……ってうおおお、目が痛ぇぇぇ! ショートしてバチバチするぅぅぅ!」
ξ;゚听)ξ 「(工場区画、ほんとに高岡さんに任せてていいのかなぁ……)」
-
165 :1
:2007/11/16(金) 20:00:31.30 ID:y+sFl1ez0
- @
ξ゚听)ξ 「いーい? ツンは、648。フサギコは、7A13。クーは、6B。流石兄弟は、624B49A」
(; ^ω^) 「ちょっ、ちょっと待ってほしいお! バッテン、いきなりそんなに言われてもバッテン!」
ξ゚听)ξ 「あ、あれ? 分からない? えっとねぇ、じゃあもう一回最初から。ツンは、648……」
ガチャ
ミ,,゚Д゚彡 「ういーっす。陣中見舞いだぞー。どーだお勉強は。進んでっか」
川 ゚ -゚) 「……見たところ、ダメっぽいな。文字よりも、先に言葉を教えた方がいいんじゃないか?」
ξ゚听)ξ 「そうなんですかねー。じゃあえっと、何から教えようかなー……」
川 ゚ -゚) 「面倒だな。タガがあれば、学習データを一気に教え込めるものを」
ミ,,゚Д゚彡 「そいつぁ言わないお約束だぁな。幾らか言葉も話せるようになってきたじゃねーか。なぁブーン?」
( ^ω^) 「こんにちは、フサギコ、クー」
ξ゚听)ξ 「そうそう、挨拶はこんにちは、だよね!」
川 ゚ -゚) 「……非効率的」
ミ,,゚Д゚彡 「いいんじゃねえの。一気に覚えられちゃ、教え甲斐もねーだろ」
川 ゚ -゚) 「…………。そうかも、しれないけど」
-
166 :1
:2007/11/16(金) 20:01:18.09 ID:y+sFl1ez0
- 1000年後に目覚めてみたら、そこはヒトたちの世界でした。
最初はどうなるかと思っていたけれど、なんとか生きていけるようです。
彼らと違って、ぼくは、水も酸素もなくては生きていけないけれど。
でも、彼らはぼくを受け入れてくれました。
ぼくにも、友だちができました。
――( ^ω^)は水も酸素もなくては生きられないようです 1話 直交軌道 おしまい。
ミ,,゚Д゚彡 「あ、そうだ。高岡のヤロー、トリがどうとかって言ってたぞ」
ξ゚听)ξ 「あ、この前も、なんか意味ありげだったんですよね。なんだったんだろ?」
-
173 :1 ◆JTDaJtyHNg:2007/11/16(金)
20:04:25.29 ID:y+sFl1ez0
- えーあー、というワケで、( ^ω^)は水も酸素もなくては生きられないようです、第1話でした。
まずは、支援してくれた方、ありがとうございます。恐縮っす。すげー恐縮っす。
それから、面白いと言ってくれた方も。励みになったっす。
あと、スレ立て代理してくれた人。ありがとうございます。
いまだ2作目の拙いデキではありますが、2話もヨロシクお願いします。3部構成にするつもりです。
あ、えっとそれから、次スレ! と書き込んでいた方がいて、いつまでも引っかかってるんですが。
このタイトルってどっかとカブってますでしょうか……それがちっと心配です。
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